大野接骨院/ハートプラン研究所 | 上尾市の接骨院

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応急処置の湿布についての考察

スポーツ活動中に怪我をした時に、応急処置として湿布薬を貼付された経験は誰しもあると思います。応急処置としてのアイシングを施すのであれば、湿布の貼付よりも氷水等での患部冷却がより目的に沿っていると考えております。

アイシングの有効性

怪我をすると、受傷部位の毛細血管が物理的に損傷され、また炎症を伴うと血管が拡張し、内出血を伴います。応急処置の目的は、内出血を極力抑えて、二次的低酸素状態を最小限にすることです。二次的低酸素状態とは、怪我をした時に損傷によってできた内出血が、損傷部位だけでなく、その周辺部位に物理的な圧迫を引き起こし、その結果、低酸素状態となり、周辺部位の細胞の死滅危機にさらされる状態です。アイシングは、細胞の活動レベルを低下させることで、二次的低酸素状態を遅らせる効果が期待できます。また、麻酔効果による疼痛緩和の助けにもなります。患部の冷却効果を最大限にするためには、氷水によるアイシングが最適であると考えます。

湿布に含まれている主な成分

湿布薬には、冷感・温感刺激成分が含まれています。冷感刺激成分にはメントール、温感刺激成分としてトウガラシエキスが配合されています。目的部位を冷やしたり温めたりする場合は、湿布薬でも目的部位にある程度の温感・冷感刺激を与えることが出来ますが、氷水でのアイシングや湯船、ホカロンの使用がより適切であると考えております。痛みを抑えたり、炎症を和らげたい時に、湿布薬に配合されている消炎鎮痛作用が、より効果を発揮します。

湿布薬に含まれている消炎鎮痛成分には、第1世代と呼ばれている昔ながらの湿布によく配合されているサリチル酸メチル、サリチル酸グリコールがあります。サリチル酸メチル、サリチル酸グリコールの作用は、文献[1]によると「皮膚から吸収された後、サリチル酸に分解されて、末梢組織(患部局所)におけるプロスタグランジンの産生を抑える作用も期待されるが、主として局所刺激により患部の血行を促し、また、末梢の知覚神経に軽い麻痺を起こすことにより、鎮痛作用をもたらすと考えられている。」です。一方、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)、及びロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン)等、より強い消炎鎮痛作用がある非ステロイド性坑炎症成分が含まれている湿布薬を第2世代と言います。非ステロイド性抗炎症成分は、ステロイドホルモンと共通する化学構造を持たず、プロスタグランジンの産生を抑える役割を持ちます。プロスタグランジンは、痛みを増強したり、炎症を悪化させたりする働きを持ちます。捻挫や打撲等で患部にダメージを負った際、痛みの発生物質であるブラジキニンが患部から生成され、同時にプロスタグランジンにより増強されます。プロスタグランジンの産生を抑えることにより、疼痛や炎症を和らげるのです。ステロイドホルモンは、副腎皮質から分泌されるホルモンであり、血糖を調節したり、炎症を制御したりするなどの作用を持ちます。ステロイドホルモンの化学構造をベースに人工的に作り出し、プロスタグランジンの産生を抑える成分がステロイド性抗炎症成分です。そして、ステロイド性抗炎症成分と共通する化学構造を持たないものが非ステロイド性抗炎症成分です。つまり、湿布薬の消炎鎮痛効果は、プロスタグランジンの産生を抑えて、疼痛緩和や坑炎症作用を持たせるのです。急性期には、二次的低酸素状態を最小限に抑える目的で氷水でのアイシングを施し、それ以降は湿布薬で痛みや炎症を和らげ、血行を促進させて回復の促進を図ることが適当であると考えます。

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参考資料